それはとても些細なコトだった。


「昔ねぇ、年下の若い男のコに狂ったような恋をしてね・・・。」と、
BARのママは語り始めた。
ハスキーな声でタバコの煙を燻らせながら語るママの目じりには
年齢を重ねた痕があったけれど、懐かしそうな眼で語る表情は本当に綺麗で、
わたしはとっても素敵に見えた。
余裕のあるその語り方がオトナの女の象徴に思え
ああ、わたしもこんなふうに年下の女のコに古きよき想い出を
懐かしみながら語る日が来るのかな・・・なんて思っていたもんね。
わたしのあの出来事も、「あなた」のその出来事も、
何年も月日を重ねると些細なコト。
5年で傷は癒され、10年経つと記憶となり、20年経つときっと笑い話・・・。